アルコールチェック義務化と建設業: 安全な職場環境を築く

法令
アルコールチェックって、いつ義務化になったの?どんな人がチェックの対象なの?罰則規定は?

という話を聞くようになりました。そこで今回はアルコールチェック義務化について解説していきます。

 

1. アルコールチェック義務化とは?

1-1. アルコールチェック義務化の経緯

アルコールチェックが義務化された経緯について解説します。

  • 令和3年6月に千葉県八街市で、下校中の小学生の列に飲酒運転のトラックが衝突し、5名が死傷する事故が発生。
  • 令和3年11月、安全運転管理者(※)に対するアルコール検知器の使用義務化規定を新設(※) 道路交通法上、一定台数以上の自動車を使用する自動車の使用者が、事業所等ごとに置かなければならないとされている。

1-2.安全運転管理者制度の概要

アルコールチェック義務化の対象となる企業かどうかは、安全運転管理者が選任されているかどうかです。一定台数以上の自動車を使用する自動車の使用者は、自動車の使用の本拠(事業所等)ごとに、自動車の安全な運転に必要な業務を行う者として安全運転管理者の選任を行わなければなりません。下記が安全運転管理者の選任対象です。

1.安全運転管理責任者の選任義務
一定台数以上の自動車を使用する自動車の使用者は、自動車の使用の本拠(事業所等)ごとに、自動車の安全な運転に必要な業務を行う者として安全運転管理者の選任を行わなければならない。※ 運行管理者等を置く自動車運送事業者、第二種貨物利用運送事業者及び自家用有償旅客運送事業者の事業所は対象外
引用元:安全運転管理者制度の概要

2.安全運転管理者の選任を必要とする自動車の台数
〇 乗車定員が11人以上の自動車 1台以上
〇 その他の自動車       5台以上
※ 大型自動二輪車又は普通自動二輪車は、それぞれ1台を0.5台として計算
※ 台数が20台以上40台未満の場合は副安全運転管理者を1人、40台以上の場合は
20台を増すごとに1人の副安全運転管理者の選任が必要
引用元:安全運転管理者制度の概要

3.安全運転管理者等の要件
安全運転管理者
20歳以上(副安全運転管理者が置かれる場合は30歳以上)
自動車の運転の管理に関し2年以上の実務の経験を有する者等
引用元:安全運転管理者制度の概要

4.副安全運転管理者
20歳以上
自動車の運転の管理に関し1年以上の実務の経験を有する者等<欠格事項>
〇 過去2年以内に都道府県公安委員会による安全運転管理者等の解任命令を受けた者
〇次の違反行為をして2年経過していない者
酒酔い・酒気帯び運転、麻薬等運転、妨害運転、無免許運転、救護義務違反、飲酒運転に関し車両等を提供する行為、酒類を提供する行為及び要求・依頼して同乗する行為、無免許運転に関し自動車等を提供する行為及び要求・依頼して同乗する行為、自動車の使用制限命令違反
〇次の違反を下命・容認してから2年経過していない者
酒酔い・酒気帯帯び運転、麻薬等運転、過労運転、無免許運転、大型自動車等の無資格運転、最高速度違反、積載制限違反運転、放置駐車違反
引用元:安全運転管理者制度の概要

5.安全運転管理者等の選任の届出義務
安全運転管理者等を選任したときは、選任した日から15日以内に都道府県公安委員会に届け出なければなければならない。
※ 届出に関する質問については自動車の使用の本拠の位置を管轄する都道府県警察又は警察署まで
引用元:安全運転管理者制度の概要

1-3. アルコールチェック義務化のスケジュール

アルコールチェック義務化がいつから適用されるのかについて詳しく説明します。

  • 令和4年4月1日から施行、安全運転管理者に対し、目視等により運転者の酒気帯びの有無を行うこと及びその内容を記録して1年間保存することを義務付ける規定
  • 令和5年12月1日から施行、 安全運転管理者に対し、アルコール検知器を用いて運転者の酒気帯びの有無の確認を行うこと並びにその内容を記録して1年間保存すること及びアルコール検知器を常時有効に保持することを義務付ける規定
    引用元:安全運転管理者の業務の拡充等

2. アルコールチェックの実施方法

2-1. アルコールチェック機器

一般的に使用されるアルコールチェックの機器について解説します。どのような機器が信頼性が高く、正確なアルコール検査ができるのかを紹介します。

タイプ別の特徴

ハンディタイプ
持ち運びができる。安価である。現場への直行直帰などが多い業種向け
据え置きタイプ
ハンディタイプより高額。事務所から出庫・帰庫が多い業種向け

センサーの種類によるメリット・デメリット

電気化学式・燃料電池式
アルコール以外ほぼ反応しない高精度なセンサー。高額なことが多い。
半導体式
アルコール以外でも強いにおいに反応することがある。安価である。

2-2. アルコールチェックの頻度とタイミング

アルコールチェックはどのような頻度で行うべきなのか、従業員に対してアルコールチェックを行うタイミングについて解説します。

  1. 運転前後の運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認すること。令和4年4月1日より施行
  2. 酒気帯びの有無について記録し、記録を1年間保存すること。令和4年4月1日より施行
  3. 運転者の酒気帯びの確認を、アルコール検知器を用いて行うこと。令和5年12月1日より施行
  4. アルコール検知器を常時有効に保持すること。令和5年12月1日より施行

引用元:事業所の飲酒運転根絶取組強化

上記補足情報

⑴ 業務の開始前後の運転者に対する確認
府令第9条の10第6号に定める「運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者」における「運転」とは、一連の業務としての運転をいうことから、同号に定める酒気帯びの有無の確認(以下「酒気帯び確認」という。)は、必ずしも個々の運転の直前又は直後にその都度行わなければならないものではなく、運転を含む業務の開始前や出勤時及び終了後や退勤時に行うことで足りる。
⑵ 目視等及びアルコール検知器による酒気帯び確認の方法
「目視等で確認」とは、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子等で確認することをいう。
酒気帯び確認の方法は対面が原則であるが、直行直帰の場合その他対面での確認が困難な場合にはこれに準ずる適宜の方法で実施すればよく、例えば、運転者に携帯型アルコール検知器を携行させるなどした上で、
① カメラ、モニター等によって、安全運転管理者が運転者の顔色、応答の声の調子等とともに、アルコール検知器による測定結果を確認する方法
② 携帯電話、業務無線その他の運転者と直接対話できる方法によって、安全運転管理者が運転者の応答の声の調子等を確認するとともに、アルコール検知器による測定結果を報告させる方法等の対面による確認と同視できるような方法が含まれる。
引用元:道路交通法施工規則の一部を改正する内閣府令の施工に伴うアルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認等について(通達)

2-3.日常点検と正しい測定

アルコール検知器の技術や品質の向上、ならびにアルコール検知器の普及啓発によって業界の地位の向上を図る。関係官庁、各団体との会員相互の協調を通じて、アルコールの過剰摂取や短時間での大量摂取等に代表される飲酒問題の根絶に寄与することを目的としたアルコール検知器協議会があります。
アルコール検知器協議会では正しい日常点検、正しい測定が記載されています。

正しい点検

損傷がないこと
電源が入ること
正常呼気で反応がでないこと
アルコール成分を含んだ呼気等に反応があること
正常呼気で再測定して反応がでないこと
引用元:アルコール検知器の正しい使い方

正しい測定

アルコール検知器に反応がありえる飲食物等をあらかじめ測定者に伝えておきましょう。
飲酒以外でのアルコール反応があった場合の対処法を事前につたえておきましょう。
アルコール検知器ごとに定められた測定、保管環境を守ってください。
引用元:アルコール検知器の正しい使い方

3. 安全運転管理者の選任義務違反に対する罰則

3-1. 罰則規定

安全運転管理者や、副安全運転管理者を選任しなかった場合には、50万円以下の罰金(法人等両罰50万円以下の罰金)という厳しい罰則があります。
引用元:埼玉県安全運転管理者協会

4. アルコールチェック義務化と建設業: 安全な職場環境を築く~まとめ~

今回はアルコールチェック義務化に関して解説していきました。アルコールチェックの義務化によって従業員のアルコール過剰摂取や短時間での大量摂取等の抑止力になったと言われた企業もありました。飲酒による事故等の報道も未だに絶えない状況ですが、今回の記事が飲酒問題解決の一役になればうれしいです。

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