ISO 45001:2018要求事項6つの基本ガイド

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ISO45001で要求されることってどんなこと?

ISO 45001:2018は労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格で、組織と従業員の健康を守り、事故や災害を減らすために不可欠です。この記事では、ISO 45001:2018の基本的な要求事項について、初心者の方々にわかりやすく説明します。

 

 

ISO 45001:2018の要点

1. リーダーシップと関与

ISO 45001:2018における「リーダーシップと関与」とは、組織のトップマネジメントが労働安全衛生マネジメントシステムの実施と維持に積極的にコミットメントし、積極的な関与を示すことを指します。これは、組織内で労働安全衛生の文化を醸成し、従業員が安全で健康的な環境で働けるようにするための非常に重要な要素です。

リーダーシップの役割:

1. ビジョンと目標の設定:
リーダーシップは、労働安全衛生に関するビジョンと目標を設定し、それらを組織全体に伝えます。これにより、組織の方向性が明確になり、労働安全衛生へのコミットメントが示されます。

2. 方針の策定:
トップマネジメントは、具体的な労働安全衛生方針を策定します。この方針は、組織の安全衛生への取り組みを示し、従業員や他の関係者に伝えられます。

3. 資源の提供:
労働安全衛生活動に必要な資源(人員、設備、トレーニング、技術的なサポートなど)を提供します。適切な資源が確保されることで、安全衛生活動が効果的に実施されます。

関与の方法:

1. コミュニケーション:
リーダーシップは、従業員と労働安全衛生に関するコミュニケーションを促進します。問題や提案を受け入れ、従業員の声を尊重します。

2. 教育とトレーニング:
従業員に対して必要な教育とトレーニングを提供し、安全な作業手順やリスク管理の方法について教育します。従業員が安全衛生に関する知識を持つことは非常に重要です。

3. 積極的な関与:
リーダーシップは、労働安全衛生活動に積極的に関与し、現場の安全性に対する興味と理解を示します。現場を訪れ、従業員と直接対話することで、安全な作業環境の確保に寄与します。

リーダーシップと関与が確保されることで、組織は労働安全衛生の重要性を理解し、従業員が安心して働ける環境を提供できます。これは、組織の信頼性向上や生産性向上にもつながります。

2. 政策の策定

ISO 45001:2018における「政策の策定」とは、組織が労働安全衛生に対する具体的な目標やコミットメントを明確に示す文書を作成し、全従業員や関係者に共有するプロセスを指します。労働安全衛生の政策は、組織のトップマネジメントによって定義され、以下の要素を含むことが一般的です。

政策の要素:

1. 安全衛生へのコミットメント:
政策文書は、組織のトップマネジメントが労働安全衛生への継続的なコミットメントを示す場であり、従業員と関係者に向けた明確なメッセージを伝えます。組織は、従業員の安全と健康を最優先に考えるという姿勢を明示します。

2. 法的要件の遵守:
政策は、適用される法的要件や規制に従うことを約束します。これには、労働安全衛生に関する地域や国の法律、規制、業界標準などが含まれます。政策は、これらの要件を遵守し、違反を防ぐための指針を提供します。

3. 目標の設定:
労働安全衛生の政策文書は、具体的で測定可能な労働安全衛生の目標を含みます。これには、事故の削減、作業環境の改善、トレーニングの実施などが含まれます。これらの目標は、組織が効果的な労働安全衛生マネジメントシステムを実装するための方針を示します。

4. 継続的な改善:
政策文書は、労働安全衛生の継続的な改善に向けたコミットメントを含みます。組織は、定期的な監査、従業員のフィードバックの収集、事故の調査などを通じて、安全性の向上に努めることを公約します。

政策の伝達と適用:

1. 従業員への普及:
政策は、組織内の全従業員に普及され、理解される必要があります。トレーニングセッションや会議、社内コミュニケーション手段を通じて、政策の内容が明確に伝えられます。

2. 実施と監視:
政策の遵守と実施は、組織内で監視されます。内部監査や定期的なマネジメントレビューを通じて、政策が適切に実施され、目標の達成度が確認されます。

3. 改善:
労働安全衛生の政策は、必要に応じて改善されます。組織は、政策の効果を評価し、変化する環境や新しいリスクに対応するために政策を調整します。

政策の策定とそれに基づく行動は、組織内の安全文化を構築し、事故や災害を未然に防ぐために不可欠です。

3. リスク評価とリスクマネジメント

ISO 45001:2018では、組織は労働安全衛生のリスクを特定し、評価して適切に管理することが求められます。これは、従業員や他の関係者の安全を確保し、事故や災害のリスクを最小限に抑えるために非常に重要なプロセスです。

リスク評価の手順:

1. リスクの特定:
組織は、作業場やプロセスで発生しうるすべての潜在的なリスクを特定します。これには、作業環境、機器の使用、化学物質の取り扱い、従業員のトレーニングレベルなどが含まれます。

2. リスクの評価:
特定されたリスクに対して、その影響度と発生頻度を評価します。影響度はリスクが引き起こす可能性のある損害の大きさを示し、発生頻度はリスクが実際に発生する確率を示します。

3. リスクの優先順位付け:
評価されたリスクは優先順位付けされ、最も深刻で発生確率の高いリスクに対処するための優先度が決定されます。これにより、組織は資源を効果的に割り当て、最も重要なリスクに対処することができます。

リスクアセスメントの手法:

1. ハザード識別:
作業場やプロセスで発生する可能性のあるハザード(危険要因)を特定します。これには、物理的なハザード(機械、電気、火災など)や化学的なハザード(有害な物質、薬品)などが含まれます。

2. フェイルチェーン分析:
プロセスの各段階でのフェイルチェーン(障害が次々に起こる可能性のある連鎖)を特定し、それによって引き起こされるリスクを評価します。

3. 安全性インテグリティレベル(SIL)分析:
特定の安全関連制御システムが、事故を防ぐための適切な信頼性とパフォーマンスを持っているかどうかを評価します。

対処策の適用:

1. リスクの回避:
最も高いリスクを持つ活動を変更し、リスクを回避します。例えば、危険な作業手順を改善することで、事故のリスクを減らします。

2. リスクの軽減:
リスクを軽減するための措置を講じます。これには、安全装置の導入、トレーニングプログラムの実施、定期的な保守作業の実施などが含まれます。

3. リスクの受容:
一部のリスクは受け入れ可能であると判断される場合、それに対する緊急対応計画や事故対応手順を備えておくことが重要です。

リスク評価とリスクアセスメントのプロセスは、組織が安全な作業環境を提供し、事故や災害を未然に防ぐための基盤を提供します。これにより、組織は従業員と関係者の安全を確保し、法的コンプライアンスを遵守することができます。

 

 

4. 目的・目標の設定

ISO 45001:2018では、組織は労働安全衛生に関する具体的な目的と目標を設定し、それらを達成するための計画を策定することが求められます。これによって、組織は持続的な労働安全衛生マネジメントシステムの構築と改善に向けた方向性を定め、従業員の安全を確保し、事故のリスクを最小限に抑えます。

目的・目標の設定手順:

1. 具体的な目標の定義:
組織は、労働安全衛生に関する具体的な目標を設定します。これには、特定の作業環境やプロセスにおける事故率の削減、安全訓練の実施率向上、安全装置の導入などが含まれます。

2. 測定可能な目標の設定:
目標は測定可能でなければなりません。例えば、事故の数、労働者の訓練率、安全対策の実施率など、具体的な数字や割合を設定することで、目標の達成度を定量的に評価できます。

3. 達成期限の設定:
各目標には達成期限が必要です。目標を達成するための時間枠を設定することで、組織は目標の進捗を追跡し、必要な調整を行うことができます。

目標の設定の重要性:

1. 組織の方針と整合性:
目標は組織の方針と整合性があり、方針の達成に向けた具体的なステップとして機能します。

2. 従業員のモチベーション向上:
明確な目標は従業員に方向性を提供し、自身の役割が組織の安全性向上にどのように貢献するかを理解させることで、モチベーションを向上させます。

3. 持続的な改善:
目標は組織に継続的な改善へのコミットメントを促し、労働安全衛生マネジメントシステムのパフォーマンスを向上させる手助けをします。

4. 外部とのコミュニケーション:
目標は、外部の利害関係者や顧客とのコミュニケーションにも役立ちます。組織が安全性向上に向けて積極的に取り組んでいることを示します。

組織が具体的で測定可能な目標を設定し、それを達成するための計画を立てることで、労働安全衛生マネジメントシステムはより効果的に運用され、組織全体の安全性が向上します。

5. コミュニケーションと文書管理

ISO 45001:2018では、組織内外のコミュニケーションの円滑化と、労働安全衛生に関する情報の適切な文書管理が求められます。これによって、組織は安全性に関する情報を適切に伝達し、必要な記録を保存し、関係者との連絡を確保することができます。

コミュニケーションの重要性:

1. 内部コミュニケーション:
組織内では、上層部からの指示、従業員からの報告、安全に関するトピックについての情報共有が円滑に行われる必要があります。これによって、従業員は安全意識を高め、問題や提案を素早く共有できます。

2. 外部コミュニケーション:
組織は外部利害関係者(顧客、サプライヤー、地域社会)とも適切にコミュニケーションを取る必要があります。安全性に関する情報を透明かつ正確に伝え、信頼関係を築くことが求められます。

文書管理の重要性:

1. 情報の記録:
労働安全衛生に関する情報(ポリシー、手順、訓練記録、事故報告書など)は適切に文書化され、整理されるべきです。これによって必要な情報を容易にアクセスでき、過去のデータを活用することができます。

2. 規制要件の遵守:
特定の文書を保管し、適切な記録を取ることは、労働安全衛生に関する規制要件を遵守するために必要です。適切な文書管理は法的コンプライアンスを確保するのに不可欠です。

文書管理の手法:

1. 文書の分類:
安全関連文書を適切に分類し、必要な文書と情報を識別します。これによって、必要な文書を見つける時間を短縮し、誤解を防ぎます。

2. アクセス制限:
機密性の高い情報は適切なアクセス制限を設け、権限のある人々だけがアクセスできるようにします。これによって情報のセキュリティを確保します。

3. 定期的なレビュー:
文書は定期的にレビューされ、最新かつ正確な情報が反映されるようにします。過去の情報は必要ない場合には適切に廃棄されます。

コミュニケーションと文書管理の効果的な実施により、組織は労働安全衛生に関する情報を適切に伝達し、必要な記録を保存し、関係者との信頼性のある関係を築くことができます。これによって、組織は安全性の向上と効果的なリスクマネジメントを実現します。

6. 内部監査と管理のレビュー

ISO 45001:2018では、組織は定期的に内部監査を実施し、労働安全衛生マネジメントシステムの適切な運用と遵守を確認することが求められます。また、組織のトップマネジメントは定期的にマネジメントレビューを行い、効果的なマネジメントシステムの維持と改善を確認します。

内部監査の重要性:

1. システムの評価:
内部監査は労働安全衛生マネジメントシステムの適切な運用を評価します。手順や方針が正しく実施されているか、従業員が指示通りに作業しているかなどを確認します。

2. 問題の特定:
内部監査は潜在的な問題やリスクを特定する役割を果たします。これによって、問題が発生する前に予防措置を講じたり、早期に修正を行ったりすることが可能です。

3. 法的コンプライアンスの確認:
内部監査は組織が労働安全衛生に関する法的要件を遵守しているかどうかを確認します。法的コンプライアンスの違反を防ぎ、罰金や法的訴訟から組織を守ります。

内部監査の手法:

1. 計画と準備:
内部監査は計画的に行われます。監査の範囲、目的、頻度、担当者などが計画され、監査プロセスに備えます。

2. 実施:
内部監査チームは計画に基づき、現場での実際の作業状況や文書、記録を評価します。従業員へのインタビューや証拠の収集も行います。

3. 報告と改善:
監査結果は文書化され、問題点や改善提案が報告書にまとめられます。組織はこれを元に必要な修正や改善を実施します。

マネジメントレビューの重要性:

1. マネジメントシステムの維持:
トップマネジメントがマネジメントレビューを行うことで、マネジメントシステムが維持されていることを確認します。継続的な適合と効果的な運用を保証します。

2. 改善の機会:
マネジメントレビューはマネジメントシステムのパフォーマンスを評価し、改善の機会を議論する場です。問題点や課題を特定し、それに対する対策を検討します。

3. 利害関係者との連絡:
マネジメントレビューは外部の利害関係者との透明性あるコミュニケーションを提供します。組織の安全性向上に対する真摯な取り組みが示されます。

内部監査とマネジメントレビューは、組織が労働安全衛生マネジメントシステムを効果的に運用し、継続的な改善を実現するための不可欠なツールです。これによって、組織は従業員と関係者の安全を確保し、事故や災害のリスクを最小限に抑えます。

ISO 45001:2018認証取得のメリット

・労働災害の削減
・法的コンプライアンスの確保
・労働者のモチベーション向上
・信頼性の向上と顧客満足度の向上

 

 

ISO 45001:2018要求事項6つの基本ガイド~まとめ~

ISO 45001:2018は、組織が安全な労働環境を提供し、従業員と社会への責任を果たすための貴重なツールです。組織はこの規格に基づき、持続可能な労働安全衛生マネジメントシステムを築くことで、成功を収めることができます。

 

 

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